Taisuki Café

台湾が大好き♡

台湾人が優しいって本当かしら?

台湾人が優しいって本当かしら?

◎台湾人の優しさ?
「台湾人が日本人と欧米人に優しいのは、国際的に認めてほしいからですよ」

プライベートで中国語を教えてくれた、台湾人の先生に言われた言葉です。19年暮らした香港から台北へ引越してきた私には、なんとなくその意味がわかりましたが、うんともいいえとも言えませんでした。

広東語を勉強するために東京から香港へ渡り、永住権も取った後、私は時々台湾へ息抜きに来ていました。中国大陸から香港への渡航が緩和され、電車に乗っても、街を歩いても、買い物客に文字通り押しつぶされ、突き飛ばされるようになってしまった日常から、逃避のために。

台北、台中、高雄、墾丁。香港から一時間半ほどで来ることが出来る台湾は、あの頃の私にとってリカバリーとリハビリの場所でした。

広東語なら「今日寒いねー、お姐さん何かあったまる美味しいもの、お勧めある?」と言えることが、中国語では「寒いです、暖かいもの、欲しいです」としどろもどろな私の意思を汲み取って、暖かい湯麺を勧めてくれた女の子の「お待たせしました、熱いから気を付けてね」という柔らかいことば。

猫空の茶芸館で、大きな盆に茶器一式を乗せて運んできてくれた男の子に「謝謝」とお礼を言ったら「不會」と笑顔で返してくれたこと。

そして、台湾にはカフェがある。香港は家賃高騰で、好きな場所がいくつも閉店に追い込まれていました。仕方なく家に帰ってコーヒーを淹れても、上階に越してきた新移民がドタバタ暴れて気が滅入る。当時、神経がすり減らずにいられるのは、仕事場の中だけでした。

珈琲を飲みながらゆったり過ごす文化と習慣があること。本や映画を、商業ではなく「語り合う」空間があること。空間と文化を、当時の私は強烈に必要としていました。

台湾でやりなおそうか。人として気持ちを立て直そうか。長年住んだ香港で散々迷って決意して、私は猫を連れて、台北での生活を始めました。

◎私の中国語が上達しないのは、台湾人が親切だから

「台湾は親日」「どこに行っても親切にされる」「道に迷ったら目的地まで連れて行ってくれた」「知らない人にごちそうになってしまった」「タクシーに置き忘れたバッグを運転手さんがわざわざ届けに来てくれた」

台湾で親切にしてもらったちょっとイイ話や感動的なエピソードを、一度や二度は聴いたことがあるでしょう。

私の中国語が上達しないのは、台湾人が親切だから

確かに台湾の人たちは優しい。だから私の中国語は上達しません。何かに困っていると、周囲の人が必ず助けてくれるから。

立ち止まって考えこんでいると見知らぬ人たちがわらわらと寄って来て、自分は日本語ができないからと、わざわざ電話で親兄弟、友達や同僚など、日本語ができる人に連絡してまで、どうにか「困りごと」と解決しようとしてくれる。

そんな台湾の人たちに囲まれて、私は甘えきってしまいました。プライベートレッスンの先生も日本語が堪能なので、お互いの旅行や読んだ本の話ばかりして、楽しかったけれど、厳しく仕込まれたとは言えません。

香港で暮らしていた頃は、たどたどしい広東語で話しかけようものなら
「あぁ?!」「なんだって?!」
と歯切れ良く眉間にしわを寄せて聞き返されることばかりでした。
「あなた、何を言ってるのかわからないわ」
とけんもほろろに門前払いを食らい、そのたびに傷つき、なにくそ!と必死で広東語を覚えて行きました。

香港でビザを取る、仕事をする、家を借りる、買い物をする、飲茶をする、喧嘩をする、警察に通報する、救急車を呼ぶ…どんな場面でも、現地での公用語が出来なければ、自分の希望は通らず、権利を守ることも出来ません。

香港人の友人たちには「今の発音、何?」「ねえねえもう一回言って?」と散々からかわれました。彼らは私が正しい発音になるまでとことん厳しく直してくれたので、一通りの広東語を身につけることができたのです。

◎香港仕様で台北に移り住んできた私が見た台湾人

台北に移ってきたばかりの私は、吊り上がった眉、眉間にしわ、歯切れ良い口調、人混みをぶつからないようにすり抜ける身のこなしも、香港仕様のままでした。

ネット環境を整えるために入ったパソコンの店やアパートの管理人さん。生活に根付いた場面では、相手が私を警戒する気配を感じました。店に入った瞬間から、私の佇まいは台湾人の知っている日本人とは違っていたのだそうです。その上喋れば広東語訛り丸出し(しかも自覚無し)だったから、
「あなたどこの人」
「ここの人じゃないようだね」
と聞かれることが、何度もありました。斜めから見るような冷たい対応に戸惑い、日本人ですと答えると
「日本の方だったんですね。てっきり香港人かと思って」
と、旅行の時に出会った、日本人が知っている、優しくて親切な台湾人の笑顔を向けられることに、ほっとするような、戸惑うような気持ちになりました。

「あなた、日本人じゃないね!」
中山北路の、日本人が多く泊まるホテルの近くのコンビニで、店員さんに日本語で言われたこともありました。
「日本人ですよ。なんでです」と笑うと
「だってあなたの中国語、日本人の話し方じゃない。香港人の話し方!」
「日本語でそんなこと言われても困るわあ」とますます笑ってしまいました。彼はなかなかユーモアが効いていたと思います。

そんな風に、「香港人かと思ったら日本人だった」と、素っ気ない態度から手のひら返しで親切にしてもらうことが、台北に来て1年くらいの間、何度も何度もありました。だから「台湾人が親切にするのは日本人と欧米人だけ」という台湾人が言う皮肉や自嘲も、納得しました。「逃避」で遊びに来ていた頃には気づかなかった、生活を始めてから実感したことです。

◎台北で、香港人と一緒にいると感じる些細なこと

日本人が台北でタクシーに乗ると、日本語の曲をかけてくれる運転手さんに出会うことがよくあります。たとえそれが、誰が歌っているのかもわからない演歌や軍歌(!)であっても、微笑みながら聴き流します。

ある時香港人とタクシーに乗り、後部座席で広東語で話していると、運転手さんが無言でラジオのボリュームをぐいっと上げました。今まで、曲を変えてくれることはあっても、音を大きくされたことはありません。ああ、煩かったのかな。ちょっとはらはらしましたが、香港人の友達は気づくでもなく
「台湾の人って本当に優しいよねえ」
と感激している。そうだね。とだけ答えました。

カフェに入る、レストランに入る、常連とは言わないまでも時々行く店なのに、どこに行っても店員さんが注文を取りに来てくれなかったのも、香港人と一緒の時だけ。お喋りに夢中になってしまって、
「あれっ、そういえばまだ頼んでないよね?」
と、友人たちはあまり気にしない様子。私はこっそり、何度も店員さんに合図を送っていたのに、完全に無視されていたのです。香港だったら絶対に文句を言うはずだけれど、台湾で遊んでいる時は、彼らものんびり、ゆったりした調子になるみたい。

これはちょっと極端な例かもしれない、でも、台湾人や日本人と行く時にはあまりない現象なので、やっぱり気になってしまいました。

◎台湾に来て、泣いたり笑ったりする理由

香港に住んでいる日本人の友人たちが台北に遊びに来てくれた時のこと。ホテルへ迎えに行くと、彼女たちは私の顔を見るなり涙ぐむので、どうしたの何かトラブルでもあったのかと聞くと
「台湾の人はぶつかりそうになったら『不好意思』って言ってくれる」
「ぶつかってもチッて舌打ちされない」
「どこへ行っても笑顔で、你好とか謝謝って言ってくれる」

台湾にいたら当たり前のことに泣くほど、香港の日常は緊張に満ちている。そのことを思い出して、そうでしょうそうでしょう、ゆっくりしていきなさいと富錦街あたりに散歩に連れ出すと
「わあー空が広い!緑がいっぱい!」
両手を広げて嬉しそうに、台北のペースでのんびり歩く友人たち。

この街では当たり前のことに、泣かされたり喜んだり。台湾の人たちは、この日本人どうかしてるんじゃないかと驚くかもしれません。

そういう私も、初めて台北に遊びに来た時に入ったコンビニでレジ対応をしてくれた店員さんに
「日本の方ですか?Welcome to Tapei」
と声をかけられた時にはびっくりして、どうも、えへへとペコペコ頭を下げ、店を出て彼女が袋詰めしてくれたおにぎりを食べていたら、涙が出てきました。

なんでこんなに優しいんだろう。見ず知らずの外国人に「Welcome」と言える。誇りを持つことが出来るのは、なんて素晴らしいことなんだろう。私は日本にいた時も、香港で暮らしていた時も、友達や知人への挨拶以外で「ようこそ我が街へ、我が国へ」と言った記憶はありません。そんな考えは全く無かった。彼女のはにかんだ笑顔、今でも覚えています。

「台湾人が親切にするのは日本人と欧米人」と言った先生にも、この話をしました。あのコンビニの女の子は、私が日本人だからWelcomeと言ってくれたのかもしれない。それでも私は嬉しかったのです。彼女のおかげで、あの旅は素晴らしかった。忘れられないと。

それに、台湾に住んでいる外国人は、日本人も欧米人も、中国語を話す、学ぼうとする人が多い。台北で、私なんかよりずっと中国語が上手なドイツ人やアメリカ人に、何人も会いました。香港では英語が通じるから広東語は必要ないと、挨拶や、悪い言葉をちょっと覚えて口にする程度の人がほとんどでした。台湾で英語が通じないという意味ではないです。ここにいる外国人は、台湾に馴染みたくて話したくて、親切にされたお礼をちゃんと言いたい、違うことは違うときちんと伝えたい、友達になりたいから、中国語を勉強するんだと思います。

先生はちょっと考えるような、自分の考えは易々と曲げない意志の強さを維持しながら、嬉しそうにも見えるような表情をしていました。

台湾人は優しい。見ず知らずの人でも、困っている人を放っておいてくれない。
そして誇りを持っていて、プライドも高い。

親切には親切を返す、笑顔には笑顔を返す。当たり前のことを思い出させてくれたのは、台湾の人たち

親切には親切を返す、笑顔には笑顔を返す。そんな当たり前のことを思い出させてくれたのは、台湾の人たちだった。ここに住まわせてもらっている外国人として、忘れてはいけないと思っています。

香港人の話す中国語の独特な訛りやアクセント、言い回しの違いに台湾人が「ピクッ」となる場面を、何度か見たこともあります。私自身も香港訛りで警戒されたから、気のせいではないでしょう。

謝謝と言われて「不會」と返すのが台湾人、香港人は「不用謝」。その言い方、大分上から目線だねと感じても、台湾人は礼儀正しい人が多いから、その場ではあからさまに表情には出さず、気の置けない仲間と「あれはちょっと失礼だよね」と本音を漏らすこともありました。そのたびに、あれは広東語を直訳した中国語で言ってるだけで、悪気は全然ないのよと説明。すると「そうなんだー。香港人も話してみると優しい人多いよね」と穏やかに受け流してくれる台湾人が多いので、ほっとします。

隣近所だから何となく気になって必要以上に張り合うのは、アジアに限りません。サッカーの試合では、隣町や同じ市内に拠点を置くクラブ同士が対戦する時は「ダービー」といって、他の試合よりも熱く激しくぶつかり合い、緊張感が高まります。サポーターがエキサイトしてスタンドで発煙筒を焚いたり、スタジアムの外で場外乱闘になることも珍しくありません。でも、本気で町同士が憎みあっているのではなく、威嚇しあうパフォーマンスか、ある種の「伝統行事」または「お約束」に過ぎないのではと、ドイツでダービーを観戦した時に感じました。

スタジアム周辺に警察官が大挙出動、馬や犬も従えて警備にあたっていたから、体格で絶対勝ち目のない私は、そりゃあドキドキしましたよ。でも、騒ぎを起こす人はヨーロッパに深く根付いたサッカー文化に紛れ、生活や仕事の鬱憤を「隣町が気に入らない」と試合に便乗しすり替えて、爆発させているみたいだと感じました。警察の出動は、注目の集まる試合会場でのテロを警戒したのかもしれないけれど…。

ヨーロッパでは隣町との試合で発煙筒。香港人は話し方や歩き方のペースが、無意識なねずみ花火のよう。威嚇するつもりはなくても勢いがあって、いつこちらに飛んできて弾けるかわからない。だから、穏やかな台湾人は、ちょっと遠巻きに警戒しているだけなのかもしれないですね。

でも台湾には、香港で禁じられている爆竹があります。ねずみ花火より派手な音と煙が出るけれど、新年や開店などのお祝い事と予測がつくから、私は怖くありません。うちの香港生まれの猫も、台湾に来て最初の春節では爆竹音に怯えていたけれど、二年目からは平気でいます。

きっと私も台湾に来たばかりの頃は、ねずみ花火の気配を漂わせていたのでしょう。台湾人は火薬の匂いを敏感に嗅ぎ分け、警戒した。でも、日本人とわかったらすぐに警戒を解いてもらえる。信じてもらえる。本当にありがたいことです。悪いことは出来ない、この人たちの信頼を裏切ることは出来ないと、台湾で暮らし始めてから襟を正しました。

「台湾、良いと思うわよ。人は親切だしご飯も美味しいし。でも忘年会のバカ騒ぎはいただけないわ」
香港人の友達が憮然として言いました。彼女はゲストとして招かれた台湾の忘年会で、スターウォーズの衣装を着せられたことが、釈然としなかったようです。

香港ではAnnual Dinnerと言って、食事をしながらちょっとゲームや抽選会をする程度なので、私も初めて参加した台湾式の忘年会「尾牙」では、コスプレをして飲めや歌えやの賑やかさ、紅包を奪い合う本気の戦いに面食い、ドン引きし、お酒の力を借りて「台湾人がおとなしくて可愛いなんて、とんだ思い違いだったよ!」と叫びました。次年度からは率先して、賑やかしの役割を請け負いましたが。

見せてもらった忘年会の写真には、良くできたスターウォーズのコスプレが大集合していました。満面の笑みの台湾人スタッフ達に囲まれてひとり、香港人の彼女だけが戸惑いむっつりしてるので、私たちは大笑い。笑顔と習慣、伝統行事で香港人をも黙らせてしまう台湾人。ちょっと凄いと思うの。

香港生まれの猫も、台北での生活を気に入っているようです。

寄稿者情報

mimi
ライター、コーディネーター、プランナー。
香港で19年生活後、2010年から台北在住。東京出身。
街歩きで出会う猫とカフェ、ブンデスリーガ(ドイツサッカー)観戦が好き。
一丁文化出版(香港)より、日本人からみた香港の人や習慣、広東語の面白さと魅力を書いた
「當抹茶Latte遇上鴛鴦」 を中国語(一部広東語)で上梓。
五月天や台湾、香港の俳優やミュージシャンのインタビュー多数。
個人サイト| 「台北 カフェと旅ノート」

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