Taisuki Café

台湾が大好き♡

「日本時代」を生きた台湾の若者たちの青春の記録から歴史を考える

日本人は読書好きだ。日本を旅した台湾人は、電車の中で新聞や本を読む日本人を見て大いに驚く。私が仕事で出会った日本人は、研究者ではない人でも皆歴史を好んでいる。私はそのことに大変驚いた。私が一九歳で歴史学科に入学してから歴史方面に進むことはやめるよう勧められた。卒業後は自分が学んだ学科を話すと憐れむような眼差しで見られた。台湾人は歴史を好まないようだ。多くの人は歴史と聞くと、すぐさま「私は歴史が嫌いだ。時代や皇帝の年号や功績を覚えることができない」といった感想を言う。「でも、それは歴史ではない」、私は心の中でどれだけ繰り返し叫んだことか。「あなた方が思っている歴史は、歴史のすべてではない」と。少々こじつけるとすれば、大衆史である本書を執筆した動機は一九歳の時にすでに種を蒔かれていたといえる。

本書執筆の発端をお話しすると、「台北帝国大学」をテーマにした博士論文研究を行う中で日本統治時代の帝国大学および高校の存在を知ったことだ。台北高校の歴史を学び、バンカラで、他人に左右されることなく自らの信じる道を行き、思索にふける若者たちの存在を知った。当時の台北帝大学生生活調査資料から、大学生が広く深く読書に親しみ多彩な生活をしていたことがわかる。オーラルヒストリーの取材を進める中で、写真資料および中等学校の学生生活史に関する研究を入手した。それらを通じて、一九二〇年代から三〇年代の台湾は現代台湾のパラレルワールドのような、輝くようなはつらつとした社会であり、学校の教科書に記述されていた内容とは大きな違いがあることを知った。

『躍動する青春』中国語版を世に問うて以来、多くの読者から反響をいただいた。私よりも年齢が上の読者は、その方々の父親世代が描かれていると感動しておられた。父親世代が学生生活について話したことがあるのをぼんやりと聞いたことがあったようだ。本書は父親と軽い気持ちで日常の過去を話すきっかけになったのかもしれない。私よりも若い台湾人、とりわけ高校生や大学生は本書に描かれた自分の学校の様子に関連して、学校の歴史をもっと多く知りたいと尋ねてきた。本書によって自分が学ぶ高校や大学の歴史に共鳴し、もっと歴史を掘り起こしたいという気持ちをかきたてられたようだ。私と同世代の人たちは、本書に描かれた日常生活と私たちが学んだことの違いがかけ離れていること、戦前の学生と戦後世代の私たちが多くの共通点を持っていることに驚き、本書を読みながら自身の学生時代を振り返っていた。

私が最も感動したのは、台南第二高等女学校で学んだ九〇歳の女性が本書を読んだ後にFacebookページを立ち上げ、学生時代の記憶を投稿し始めたことだ。このような多くの読者の反響、読者の目の輝きは、読者各位が自分の歴史を見つけた感動の表れなのだろう。一九歳の頃は知識も能力もなく訴えることができなかった私が、この年齢になってようやく「どうして歴史を嫌うのか。歴史はあなたの中にある。だからこそ歴史は人を引き付ける。歴史の中に自分を見つけ、自分が所属するコミュニティを見つけ、過去の人々に共感共鳴し、過去の人々の気持ちや努力を感じることができる。それはなんと魅力的なことなのか」と本書を通じて伝えることができた。歴史好きの日本の皆様はすでにそれを理解されているかもしれないが。

一昨年の初頭、朝日新聞の取材があり『躍動する青春』の表紙が掲載された。その後面識のない日本の読者の方から手紙をいただき、その方のお父様の台湾時代の生活に関する資料をご寄贈いただいた。日本の友人や日本に暮らす台湾人の友人も日本語版の出版を待っている。私が思っていたよりも早く日本語版が出版されることを大変うれしく思うとともに、本書を以て日本語版に期待してくださった皆様に感謝します。本書の中国語版を出版してくださった蔚藍社社長、編集者の支援と助力ならびに日本版を出版してくださる創元社および翻訳者にも御礼申し上げたい。また、本書の参考資料に『「昭和」を生きた台湾青年』(草思社)という書籍を挙げた。この本は台湾史の古典的著作である『苦悶的台湾』の作者、王育徳の自伝である。本書の執筆過程では若き日の王育徳氏が当時と現代を行き来するようであった。氏が自伝に当時の生活の様子を詳しく記述してくださったことにも感謝申し上げしたい。

最後に、日本語版の出版に当たり今は亡き二人の恩師に感謝申し上げたい。一人は台湾史研究を推し進めてこられた張炎憲先生で、いつも温和かつ楽観的に接してくださり私を奮い立たせてくださった。もう一人は三田裕次先生で、先生はその青春と情熱を台湾のための多くの書物、文物収集にささげてこられた。台湾、日本のお二人の先生方の純粋で無私の精神は常に私の目標である。

本書を台湾のために奮闘努力した先人にささげる。

躍動する青春:日本統治下台湾の学生生活』日本語版序文より(作者:鄭麗玲、翻訳:河本尚枝/廣島大學綜合科學研究系副教授)

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