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花蓮/巨大工場の第二の人生

花蓮/巨大工場の第二の人生

連載:「台湾日式建築サンポ:都市偵探の楽しい時間」
第10回

広島県尾道市で、NPO法人のメンバーとして、空き家再生のお手伝いをしている。そこでは、小さな住宅から、せいぜい200㎡程度の物件を扱うことが多い。

いっぽう、台湾では、町中(まちなか)に残る巨大な工場がそっくりそのまま再生されている事例が少なくない。「文化創意園区」という名で、いまや台湾の観光地の五指に入るほどの人気ぶりだ。

しかし……大変だろうな、といつも思う。
日本のように「遊休地の再開発」圧力が強くないとしても、地価も高く、修理・改修の費用も膨大なはず。そしてなにより、オープン後の採算だって甘くないだろう。
さらに「どこまで新しくしてしまうか」という意匠(デザイン)面での高度な判断が常に求められる。清潔で快適な空間にしなければならないが、一方で、歴史的建造物としての「味わい」を失っては台無しだからだ。

そのひとつの解答を、私は花蓮で見た。
花蓮文化創意産業園区「a-zone」、かつての花蓮酒廠だ。大正から昭和初期に次々と建てられた事務所、工場、宿舎などが3.3ヘクタールの広大な敷地に建ち並び、それぞれがレストラン、物販、ワークスペース、劇場など、さまざまな用途に使われている。そのいずれもが「新と旧」が見事に融合したデザイン性の高い空間なのだ。

陰ではどんな苦労があったのか?
空き家再生の視点から、私は副総経理の傳廷暐さんにお話をうかがった。
「国有財産であるここを再生するために私たちは会社を設立。15年間レンタルの契約を結び、2011年から1年ほどの工期でリノベーションしました。オープンしたもののタクシーの運転手さんですら場所を知らず。あるいは、知っていても『あそこはきたない廃虚エリア』というイメージが地元では強くて、しばらく苦戦しました」。
やはり、一筋縄では行かなかったのだ。

「でも、1年目が5万人だった来場者は、2年目に70万人に激増。その理由は、いろんなニーズに応えられるようにしたからではないか、と。食はもちろん、アート、工芸体験、さらにダンスのレッスン施設や屋外の自由舞台とか。ほら、いまも原住民族のライブやってるでしょ? そしてカップルでも親子でもひとりでも、台湾人も外国人もみんなが楽しめる場にしたかった。それがトレンドになった理由ではないかと思うんです」

中庭を越えて、いくつもの建物を、傳さんは案内してくれた。
日が暮れていたのに、ギターの音や舞踏の掛け声、そしてゆったりとあるく若者の足音が絶えなかった。工場群は、静かに、そして豊かに「第二の人生」を謳歌していた。
心残りだったのは、敷地の西端にあるトラス構造の「恆好」のスペイン料理を食べる時間がなかったこと。ダイナミックな屋根裏を眺めながら食事をするのは、次回の宿題……としよう。

寄稿者情報

渡邉義孝
一級建築士・尾道市立大学非常勤講師。 NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事。東アジア日式住宅研究会会員。1966年京都府生まれ。神楽坂の鈴木喜一建築計画工房・アユミギャラリーを経て2004年「風組・渡邉設計室」設立。住宅設計の他、民家再生・文化財調査などに携わる。著書に『風をたべた日々~アジア横断旅日記』(日経BP社)。共著に『セルフビルド~家をつくる自由』(旅行人)など。

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