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張り合う建物、都市の彩り

張り合う建物、都市の彩り

連載:「台湾日式建築サンポ:都市偵探の楽しい時間」
第9回

「あなたがそう来るなら、私はこう出るわよ」
人はいろんな場面で「張り合う」ものだ。なじみのライバルにも、すれ違う未知の人にも。
では、建物も張り合うものだろうか?
イエス。たてものたちも、人間以上に激しく、しかし無言で対峙しあっている。そんな「たたかい」に、私は新竹の旧市街で出会った。

朝日が昇るのも待ち遠しく、ホテルを出ると私は東門街を歩き出した。

現代的なビルの合間に、20世紀初めに建てられた騎楼が並んでいる。この「並んでいる」というのが重要で、たいてい「お隣さん」との微妙な緊張関係が見て取れる。3連アーチのデザインも、1階のアーケード街路の高さも同じなのに、3階のコーニス(軒蛇腹)部分をまるごと高くして、ちょっとだけ格式を高めていたりする。

中央街では、向かい合う出隅(街路隅角部)の建築同士が、そろって出隅を丸くして、各階床レベルに約70センチ幅の庇をグルリと回して「張り合って」いる。その奥の古い路地の一角では、あたりを睥睨するように赤煉瓦の洋館がシンボルのように建っていた。

北門街に足を踏み入れると、そのバトルは更に激しさを増す。

「これはどうだ」と言わんばかりの、うねるようなバルコニー手すりとギリシア風のイオニア式列柱がミックスされたコテコテのバロック騎楼の斜向かいには、「お前がそう来るなら、オレはモダニズムで行くぞ!」と、対照的な幾何学性を見せる初期現代建築のお花屋さん。洗い出しのピラスター(付け柱)とアラベスクのようなタイルが、文字通り煌(きら)めく。

ペディメント(洋風の三角破風)、メダリオン(円形・楕円形の装飾)、デンティル(歯型飾り)やリボンなどの擬洋風モチーフに加え、たわわに実る稲穂やおそらく当主の姓の一文字(陳とか、林とか、劉とか……)などの「いかにも台湾的デザイン」もフル動員しながら、静かなる熱戦を展開する。

そのたたかいは、都市に豊かな陰影をもたらしてくれる。その街の豊かさと賑わいを、誰にもわかる形で表してくれる。近隣の誰かと張り合い、背伸びして胸を張ったであろう、往時の商人たちのちょっとした「ドヤ顔」を思い起こさせてくれる。建築職人の技量を向上させ、住む者に誇りをもたらしてくれる。ほかのどこにもない「その街らしさ」を醸成してくれる。そして旅ゆく者に、サンポする喜びとシャッターチャンスを提供してくれるのだ。

こんな「たたかい」なら大歓迎だ。
台湾のあちこちを、レフェリー気取りで歩いてみたくなるではないか。
「あなたの勝ち!」「こっちの方が美しい!」と。
「あくまでも、私の独断と偏見ですけどね」と心の中で言い訳をしながら。

寄稿者情報

渡邉義孝
一級建築士・尾道市立大学非常勤講師。 NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事。東アジア日式住宅研究会会員。1966年京都府生まれ。神楽坂の鈴木喜一建築計画工房・アユミギャラリーを経て2004年「風組・渡邉設計室」設立。住宅設計の他、民家再生・文化財調査などに携わる。著書に『風をたべた日々~アジア横断旅日記』(日経BP社)。共著に『セルフビルド~家をつくる自由』(旅行人)など。

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