Taisuki Café

台湾が大好き♡

翡翠のようなライチのために、ネイルを落とす10日間。

連載:「猫と珈琲、時々おじさん。〜台湾小確幸」

1年でたった10日。玉荷包ライチは台湾のジェイドフルーツ。

「この景色を、友達や家族にも見せてあげたいです」

青い空の下、見渡す限りのライチの木。赤と緑の鈴なりの実を見て、思わず私は言いました。けれども、案内をしてくれた「玉荷包ライチの達人」許倫肇さんはちょっと微笑んで残念そうに
「ライチの季節は短くて、収穫して出回るのは一年で十日から二週間ほどだから、ツアーの予定を組むのは難しいですね」

芳境合作社 三代目にして「玉荷包ライチの達人」許倫肇さん

許倫肇さんは芳境果菜運銷合作社の三代目。台湾で採れるライチの中でも最高級品種の「玉荷包ライチ」を専門に扱っています。

今では「玉荷包ライチの達人」と呼ばれる許さん、10年前までは台湾で需要の多いベジタリアン食材の仕事をされていました。その仕事を辞めて故郷に戻り、家業を継いだとのこと。

芳境農場は、高鐵(台湾新幹線)の左営(高雄)駅から車で30分の旗山區にあります。進学や就職のために都心へ出て行く人が多い中、どうして戻って来ようと決めたの?と尋ねると

「年を取った父が、苦労をしながら市場でライチを売っているのを見ていましたから。ライチの作業は一年で65日として、あとの300日は他のことができるでしょう。都会にいる時より年収が減ったとしても、家族といる時間も増やせるし、新しい方法で販売経路を作ったり、加工品の研究もできる。オフシーズンには海外の展示会などにも行きます」

集められたライチは、枝から切り離して仕分け。最初のレーンでは、枝の切り残しや品質を目と手でチェックします。
二つ目のレーンで、大きさを仕分け。ここでも、熟練のプロが目と手で判別をして出荷の品質を保ちます。
ライチは保湿が大切。色や果汁を保護するため、仕分け中も水蒸気を絶やしません。

果汁を垂らして糖度を測ります。輸出には17度以上と定められていますが、余裕でクリア。もう少しすれば、20度もこえるとのこと。玉荷包ライチは爽やかな甘さが特徴です。

期間限定、争奪戦。玉荷包は予約必須

フレッシュライチが市場に出回るのは5月の終わりから6月頃の、10日間から2週間ほどの短い期間です。
去年は冬の大寒波、4月の清明節に降った大雨、25℃前後が適している時期に30℃を越える気温の急な上昇、台風などの影響で、台湾の農産物は大打撃を受けました。特にライチはほとんど街中で見かけることなく、季節が終わってしまった記憶があります。

「今年も、去年の台風で樹が減った影響が残っていて、収穫量は例年よりも少なくなっています。収穫出来る分は、3月頃から5月の母の日くらいまでに、予約でいっぱいになるんですよ。だから街なかの市場に出る分はさらに少ないのです」

1年に一度、短い期間だけ楽しめる玉荷包ライチの味を知っている人たちは、この機会を逃さないように早めに予約をしているのですね。

10年前、通販を始めた年の売り上げはたったの15箱だったのが、クチコミで広がり、今年は2万箱にまで成長したとのこと。50粒で500元近く、単純に計算しても1粒10元と決して安いものではないのに、なぜそんなに売れるのでしょうか。

「うちのライチには、自社開発した肥料を使っています。牛乳などを使った乳酸菌の微生物が入っているので、ミルクのような滑らかな果肉になるんですよ。収穫の20日前には残留農薬の検査も行います。口にいれるものを安全に作り、土地自体も汚染が無いよう、安心して食べてもらうために、様々な工夫をしています。

また、ライチは手で受粉をさせ、手で摘む作業があります。天候などの要因で、落ちてしまう実も多いし、短い期間で集中して収穫し、仕分けする人件費もかかる。そのために、価格も高くならざるを得ないんです」

今年の獲れたてフレッシュライチの出来は

「食べてみて」と差し出されたのは、「頂級」と呼ばれる大きなサイズの丸々としたライチ。去年は数が少なかった分、1年ぶりの再会は喜びもひとしお。お久しぶりです、お元気そうで何よりですと頭を下げたくなるような気持ち。

赤と緑のグラデーションが可愛らしい実をしばし眺めてから、枝に近かった実の頭のほうからくるっと剥きます。すると透き通るような果肉が現れて、新鮮なライチの香りが夏日の作業場に広がりました。果汁が指にしたたるのも気にせず、いただきましょう。
濃厚。爽やかな口当たりの後に残る甘さ、ぷりぷりに引き締まった大きな果肉は果汁がたっぷりでした。

「玉荷包ライチの達人」と呼ばれ、新世代農業家として有名な許さんは、終始穏やかな笑顔の優しい方。その穏やかな口調の中に、自社の玉荷包ライチにはゆるぎない自信をもってお話しをされていました。

そらそうだわ。こんな美味いぷりぷりのライチ、どこに出しても恥ずかしくないわ。
台湾の宝がここにある。しかも期間限定数量限定となれば、早めに予約をして心待ちにし、大切な方への贈り物にしたくなります。

マイナス18℃、世界に届け!玉荷包ライチ

日本にもフレッシュな状態でライチの宅配は可能ですが、それも通常は1年に1便のみ。その機会を逃したら、いわゆる冷凍ライチで「我慢」するしかありません。
日本の中華料理店などで通年提供される冷凍ライチには、色といい味といい、「こんなものをライチだと珍しがって喜ぶなんて…仕方ないけど、でも…」と内心葛藤したものです。

「マイナス18℃で保存した冷凍ライチなら、美味しさはそのままですよ」
許さんが自信を持って言うので、半信半疑で比べてみました。

左は今年摘んだフレッシュライチ、右が去年収穫したライチを冷凍したもの。

室温で10分おいて、皮を剥いてみました。フレッシュライチは果肉に透明感があり、冷凍したものは白い翡翠のようです。解凍しても香りや果汁、果肉の弾力もしっかり残っていて、種に近い部分がシャーベットのように冷たくて美味しい。私は凍らせた果物が好きなので、この冷凍ライチもとても気に入りました。

「欧米では古い建物が多く火を使えない店もあるので、冷凍食品は一般的なんですよ。特にフランスでは、冷凍ライチがとても好まれます」

冷凍したものであれば生のものよりも検疫が難しくないため、世界各地への輸出を考えているのだとか。他に、ライチのジャムやビールなどの加工品の研究、商品化も進んでいます。

「フレッシュがないなら冷凍を食べればいいじゃない!」などと、浅はかなことはもう言いません。本来の味わいを残したレベルの高い加工品、新世代農業家ならではの事業が、確かに進んでいるのです。

翡翠のようなライチのために、ネイルはしない10日間

お土産にいただいた膨大な玉荷包ライチは、新鮮なうちに近所の友達へお裾分け。
「ライチ好き?良かったらどうぞ」
「大好きよ!私はこの時期、ライチの皮を剝くためにネイルはしないの」
見せてくれた彼女の指先は確かにすっぴん。ネイルを落として、柔らかい翡翠のようなライチの果実にむきあっているのですね。

「玉荷包は果物の中でも一番難しい品種です。そして、どれよりも一番美味しい。だから続けていきたいし、もっと色んな人たちに知ってもらうために、販路を広げていきたいと思っています」

お父さんの苦労を知って故郷に戻り、研究と発展を続けている許さんの、玉荷包ライチを信じる様子は一貫して、穏やかにゆるぎなく、この土地に根付いていました。

雨や気温に一喜一憂し、その都度木々や花を守るために奔走する。炎天下の収穫、多くの人の努力と手間を経て、実った旬の果物が届く幸せ。台湾は、果物の宝石箱です。その中で、玉荷包ライチは一際輝く、透き通った香り高い宝石なのでした。

次回は、玉荷包ライチで作るビールとジャムをご紹介します。どうぞお楽しみに。

芳境農場
電話:07-6651437/0915-900915
FAX:07-665-1068
高雄市旗山區旗南三路232之16號
E-mail:[email protected]

☆台湾内配送可

寄稿者情報

mimi
ライター、コーディネーター、プランナー。
香港で19年生活後、2010年から台北在住。東京出身。
街歩きで出会う猫とカフェ、ブンデスリーガ(ドイツサッカー)観戦が好き。
一丁文化出版(香港)より、日本人からみた香港の人や習慣、広東語の面白さと魅力を書いた
「當抹茶Latte遇上鴛鴦」 を中国語(一部広東語)で上梓。
五月天や台湾、香港の俳優やミュージシャンのインタビュー多数。
個人サイト| 「台北 カフェと旅ノート」

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