Taisuki Café

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「山本頭」?台北 X 昭和ミックス理髪店の看板に立ち止まる

「山本頭」?台北 X 昭和ミックス理髪店の看板に立ち止まる

連載:「猫と珈琲、時々おじさん。〜台湾小確幸」

外国の街歩きの楽しみは、看板を眺めること。

外国で、街歩きの途中や、電車や車の中から看板を見かけると、旅に来ているのだなあと感じます。

探している場所の目安として、見つけた時に安堵するのは勿論のこと、何十年、あるいは百年以上も前の歴史ある看板に立ち止まり見入ったり、憧れていた場所にようやく来ることが出来て、看板を見上げて涙したこともありました。大胆すぎるデザインや警告に度肝を抜かれることも、もうとっくに店じまいしてしまった場所に残された錆びた看板を見たり、以前そこにあったはずの看板を思い出しては、感傷的になることも。

日本語の間違いはどこに行っても珍しくはないので、「マッサーヅ」「うーメン」にいちいちつっこんだり、写真を撮ったりはしません。
でも、延平北路の理髪店に掲げられていた「山本頭」だけは、素通りできませんでした。

迪化街からMRT大頭橋駅に向かって歩いている途中に、その看板はありました。

「山本頭って、どういう頭?」

一緒にいた台湾人の友達に尋ねたものの、彼女も

「わからない。多分やくざの頭じゃない?」
「・・・山口頭、じゃないのね」
「台湾では日本人の名前というと、山がつくものが代表的なイメージがあるから」
「そうだったの」

看板には、「電棒」のサインもあります。字面から鑑みるに、こちらがパンチパーマなのででしょう。ならば山本頭とは、一体どのような頭なのか。
ふたりであれこれ推測しながらも、お店には近寄りがたく、そのまま通り過ぎてしまいました。

その夜、友達はわざわざ「山本頭」のウィキペディアページを知らせてくれました。両鬢まで刈上げて、頭頂部は平たい「平頭」から派生したスタイルをさらに「高く剃り込んだ」髪型のようです。「山本五十六がこの髪型だった」とも書かれていました。「山本頭」の語源は、この方の名字だったのでしょうか。

台北 X 昭和ミックス。男性理髪店に初めて足を踏み入れる

数日後、私は再びその店の前にいました。
近所で食事をする予定だったのですが、少し時間に余裕があったので、もう一度あの看板を見たくなったのです。

台北にはヘアサロンがあまたあります。激戦区ゆえにしのぎを削り、おしゃれな、新しい造りを競い合っているかのよう。反面、男性向けの理髪店の多くは、何年も変わらないノスタルジックな昭和の気配を残していました。午後の昼寝のように翳る店先、眼を閉じるお客さん、寡黙な職人、音楽もなく、しんと静かな空気。女性の私は入れないせいもあってか、ちょっと憧れのような思いを抱いて、店先から眺めるだけでした。

その理髪店も、台北 X 昭和ミックススタイル。さらに謎の「山本頭」の看板を掲げているもんだから、近寄りがたさは最上級。さすがに私も気後れして、少し離れたところからこっそりと、看板の写真を撮っていました。
すると、お店のおじさんが私の不審な動きに気づいたのか、笑顔で近づいてくるではありませんか。

煩わしさを避けるために「話しかけないでオーラを出す」とは言いますが、その時の私は「話しかけてくださいオーラ」を全開にしました。目が合って会釈をすると、笑顔を広げたおじさんはさらに近づいてきて

「看板撮りたいの。もっと近づけば」
「ありがとうございます。あの、山本頭ってどういうことですか?」
「短くて、剃り込みがこうあって」

おじさんは身振り手振りを入れて説明してくれました。
聴きながらお店の入り口に近づいて中を見ると、「標本」が並んでいます。

「もしかしたら、あれはヘアカタログ」
「そうだよ。山本頭は一番右」
「中に入って写真を撮っても良いですか?」
「いいよ」

丁度お客さんもいなかったので、私は念願かない、初めて男性理髪店に足を踏み入れることができました。

クラブやジムのおしゃれ坊主も実は「山本頭」!?

鏡の横に、アイロンが沢山並んでいます。これが電棒頭を作るお道具だそうです。
女性向けのヘアサロンでは、見慣れない風景ですね。

「ちなみに、山鶏頭というのはどのようなものですか?」

重ねて尋ねてみると、

「頭の先を尖らせるんだ」
「ベッカム頭でしょうか」
「違うよ」
「ですよね」

台北 X 昭和ミックスの理髪店と、かつて流行ったベッカム頭は相容れますまい。おじさんは再び、身振り手振りで山鶏頭の形を教えてくれました。リーゼントスタイルで、前髪が出る形のことのようです。

そして不意に、気づきました。山本頭は「おしゃれ坊主」の原型じゃないだろうか。一直線の生え際といい、短く刈り込んだバランスといい、ジムやクラブに、こういう頭の人いっぱいいる!いますよね!

「最近は、山本頭が出来る店は少なくなったんだよ。だからみんなうちに来るの」

おじさんは、誇らしげに言いました。
確かに、ショートカットは上手な人にお願いしないと大惨事になります。短ければ短いほど、誤魔化しはきかないもの。

山本頭を看板に掲げるこの方もまた、伝統や技術を守る職人なのですね。なんかすっとした。聞けて良かった。

帥賓理髮廳
台北市延平北路二段255之41號
お話を伺った方:劉德寶先生 0917-891-776

寄稿者情報

mimi
ライター、コーディネーター、プランナー。
香港で19年生活後、2010年から台北在住。東京出身。
街歩きで出会う猫とカフェ、ブンデスリーガ(ドイツサッカー)観戦が好き。
一丁文化出版(香港)より、日本人からみた香港の人や習慣、広東語の面白さと魅力を書いた
「當抹茶Latte遇上鴛鴦」 を中国語(一部広東語)で上梓。
五月天や台湾、香港の俳優やミュージシャンのインタビュー多数。
個人サイト| 「台北 カフェと旅ノート」

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