Taisuki Café

台湾が大好き♡

謝謝は一期一会

謝謝は一期一会

連載:「猫と珈琲、時々おじさん。〜台湾小確幸」

今度いつ言えるかわからないから、そのたびに、何度でも

東京で暮らしていた頃、森瑶子さんの小説やエッセイを夢中になって読み漁りました。彼女の描く世界、苦くても爽やかさが残る一種のハッピーエンド、女性たちの言葉や姿に、憧れや学ぶことがいくつもあったのです。

彼女にはヨーロッパやリゾート地等を舞台にした小説も多く、ご自身のエッセイにも訪れたレストランや街の匂いや風を描いていました。華やかでエキゾチックな舞台装置、でも描いているのは人と人。

特に印象に残っているのは、「ありがとう」とその都度、何度でも言うこと。若い女性向けの雑誌の連載をまとめたエッセイだったと思います。

訪れるレストランで、店員のサービスに対してその都度、ありがとうと言うと彼女は書いていました。席に案内される、メニューを渡される、飲み物を持ってくる、食事が運ばれる、デザートを勧められて断り、エスプレッソだけにするかもしれない、会計をする、コートを着せかけてもらう、ドアが開けられる。食事に行くたびに一体何度「ありがとう」と言うことか。でも、「ありがとう」ということでその場を気持ちよく、暖かくすることができる。彼女のエッセイを読んでから私も意識して「ありがとう」と言うようになり、実感しています。

「もうお礼はいいのに」と言われても、その人にとっては初めての謝謝だから

海外に行ってその国の言葉でお礼を言うのは気恥ずかしかったり、知らない言葉で言いにくいこともあるけれど、「謝謝」なら覚えやすく、言いやすいですね。私も街なかで、日本の旅行者が買い物や食事、道を尋ねた後に「謝謝」と言うのをよく耳にします。そのたびに、言われた相手も笑顔になるし、立ち聞きしてしまった私まで嬉しくなります。

「3.11で台湾が寄付したこと、日本人はずっとお礼を言うけれど、もうそんなに何度も言わなくてもいいんですよ」
時々、台湾の友人たちが言います。
「まだ言うか」と笑って、お互い様なのだからと、こそばゆいのか、こちらの気を楽にさせるためなのか。
そうね、そんなに何度もお礼を言われるとかえって困るかもしれないね。
そう答えてから、でも、あの震災を目の当たりにした日本人としては、言わずにはいられないと、強く感じました。

あのことがきっかけになって、台湾に好感を抱き、旅行をしたいと思った人は少なくないでしょう。何かの機会があったら、直接お礼を言いたい。初めての台湾旅行、初めて出会う台湾の人たちに、「謝謝」と言わずにはいられないかもしれません。

言われる方は「もう何回目?」と戸惑うかもしれないけれど、言う方にとっては初めての、一期一会の謝謝だから、どうか聞いてほしいと思います。謝謝を言えたその後は、多分少し気が楽になって、台湾を思いっきり楽しみ、もっと好きになりますから。

雨だったから、台北でやっと言えた「ありがとう」

先日、日本のある俳優が台北に来るとTaisuki.CafeがFacebookでシェアした記事で知りました。私は彼に、あることでお礼を言いたいとずっと思っていました。でも、彼が映画撮影で台湾に長く滞在していると知った時も特に何も行動はせず、その後でうっすら後悔をしました。

次にいつ、そんなタイミングがあるかもわからない。アメリカで彼が取った行動を私は東京で知り、香港に移り住んでからも、台北に来てからも、ずっと誰にも言えずに黙ってた。でも、ありがとうって、言わなければ誰にも、どこにも伝わらない。

今回は出かけましょうと決めたものの、気が高ぶるわけでもなく、落ち着いてそう思えたのは年月のせいか、台北の穏やかな気配、その頃丁度、雨が降っていたせいなのかもしれません。

そうして彼が出席するイベントに出かけ、お話をするチャンスがあったので、手短に用件を伝えました。彼が、ある友人のためにとってくれた行動が、とても嬉しかったこと。ちょっと話をした後、

「台湾に住んでるの?羨ましいな」

そう言って、彼は雨の中を歩いて行きました。

寄稿者情報

mimi
ライター、コーディネーター、プランナー。
香港で19年生活後、2010年から台北在住。東京出身。
街歩きで出会う猫とカフェ、ブンデスリーガ(ドイツサッカー)観戦が好き。
一丁文化出版(香港)より、日本人からみた香港の人や習慣、広東語の面白さと魅力を書いた
「當抹茶Latte遇上鴛鴦」 を中国語(一部広東語)で上梓。
五月天や台湾、香港の俳優やミュージシャンのインタビュー多数。
個人サイト| 「台北 カフェと旅ノート」

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