Taisuki Café

台湾が大好き♡

台南の再生カフェにて:ひとがつなげる建物との邂逅

連載:「台湾日式建築サンポ:都市偵探の楽しい時間」
第 6 回

ひとり旅は、まるで、タンポポの綿毛が風に乗って飛んでゆくようなものだ。
台湾でも私はそんな思いを強くしている。

前号で紹介した台北市青田街の敦煌画廊(青田茶館)
日式住宅フィールドワーク中に偶然見つけてオーナーと知りあったのだが、彼の娘さんが「渡邉さん、台南にも行くなら、すてきな町家再生カフェがあります」と教えてくれたのが、ここ正興街の「IORI TEA HOUSE」である。

切妻の連続した町家の右端、オーニング庇の上には、まるで看板建築のようなアーチ窓が並ぶ。「時間の止まったような」という形容がぴったりな一角。

シンプルな外観に反して、内装はバロック的で繊細。でも気品に充ちていた。床のタイルは白黒の四半敷き(45度に傾けた配列)で、空間を引き締めている。カーブしたカウンターのタイル、背面の棚の木調も落ち着いている。黒いTシャツできびきびと動くスタッフたちの動きは、見ているだけで美しい。

大変レトロなスペースですが、2016年一旦休業して、2017年に台南の西市場で再開しました。この写真は、渡邉先生の撮影した「幻のカフェ」になりました。(編集部より)

2階の天井は特に見事で、センタリング(シャンデリア吊り元の丸い石膏彫刻)の陰影は、日治時代の台南の賑わいを伝えているようだ。

日式建築を見回る渡邉義孝先生のスケッチノートです。台湾人誰見ても大興奮に違いないですね。「台南の近代建築」地図、素敵!(編集部より)

アールグレイを注文し、カウンターに座ってノートを取りだす。

ついさっき見てきた中正路の台湾文学館林百貨のイラストを書き込んでいると、スタッフや若い客が興味深そうに覗いてくる。「日式建築を見て回っているんです」と挨拶し、言葉を交わす。

こういう瞬間が、私は好きだ。地元の人しか知らない情報やまちの歴史を知ることができたりする。はたして、ひとりの女性がスマホの画面を見せてこう言った。
「こういうのに興味ありますか? 学生たちと一緒に、古民家再生のワークショップをやっているのです」。えっ? それ、尾道で空き家再生に関わっている私にとって、いちばん知りたいこと、やりたいことじゃないですか!

科学技術大の助手という蘇さんは、台南北郊の町に残る歴史的建造物である小学校の校舎を、セルフビルドで直しているという。
「最近の台湾では、日本時代の建物への興味が高まっているけれど、実際に自らの手で直すプロジェクトは少ないと思うわ」と彼女は言う。
「古い建物に命を吹き込むのは楽しいのよね。私は大工さんになりたいの。でも台湾では女性の大工は少ないから……」

写真には、崩れ落ちた外壁から植物が生える様子や、若者が下見板を直す姿が写っていた。

「ここを訪問することはできますか? ぜひその校舎を見てみたいのです」
私は身を乗り出してそうたずねた。

彼女は私のノートにアドレスを書いてくれた。
「再生校舎を見学できるように関係者に訊いておきます。次に台南に来るときに連絡を下さい」
社交辞令でなく、私は本気で「行こう」と決めた。

紹介してもらった後壁(ホービー)の新東国民小学を訪ねるのは、それから5年後のことであった。続きは次号で。

iori tea house
700台灣臺南市中西區西門路二段西門商場1號(西門市場内)
営業時間:14:00〜22:00

寄稿者情報

渡邉義孝
一級建築士・尾道市立大学非常勤講師。 NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事。東アジア日式住宅研究会会員。1966年京都府生まれ。神楽坂の鈴木喜一建築計画工房・アユミギャラリーを経て2004年「風組・渡邉設計室」設立。住宅設計の他、民家再生・文化財調査などに携わる。著書に『風をたべた日々~アジア横断旅日記』(日経BP社)。共著に『セルフビルド~家をつくる自由』(旅行人)など。

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